2003年10月1日に発売された中島美嘉さんの「雪の華」は、平成を代表する冬の名曲として世界中で愛されています。
「雪の華」をカヴァーしたアーティストは国内だけでも河村隆一さん、森山良子さん、徳永英明さん、藤井フミヤさん、鬼龍院翔さん、華原朋美さん、中森明菜さん、桑田佳祐さん、ToshIさんなどなど、他ジャンルに及ぶ大物ミュージシャンがいます。
海外では韓国、中国、台湾、シンガポール、ニュージーランドなどの人気ミュージシャンを筆頭に、なんと米国のMR.BIGのエリック・マーティンやBoyz II Menまでもが「雪の華」をカヴァーしています。
今日はそんな中島美嘉さんんの偉大な名曲「雪の華」に纏わる秘話などについて整理してみたいと思います。
「雪の華」が制作されたのは中島美嘉デビュー前の2000年夏
「雪の華」は作詞家のSatomiさんと作曲家の松本良喜さんのコンビによって作られた楽曲です。
同曲は2003年の10月に中島美嘉さんの10枚目シングルとして世に出てヒットしますが、実は同曲が作られた時期は2000年の8月頃で、当時は秋元康さんプロデュースの別歌手に提供される予定でした。
2000年8月といえば、まだ中島美嘉さんがデビューする前。(同年の中島はオーディションを受けたりデモを作ってた時期)

結局、秋元康さんプロデュースのプロジェクトで「雪の華」は採用されず、3年後に期待の新人歌手・中島美嘉さんの曲としてリリースされたのです。
色々なタイミングが重なっての、昨今の「雪の華」の在り方で、中島美嘉さんと「雪の華」の出会いは運命的だったといえます。

ちなみに中島美嘉さんのデビュー曲「STAR」と「WILL」の作詞は秋元康先生というのも不思議な縁です。
作詞家のSatomiは作家デビュー前に「雪の華」を書いていた
「雪の華」で作詞を担当したSatomiさん。
Satomiさんは年齢、性別、本名、容姿等は、すべて非公開という謎のクリエイターでした。
元々趣味で詞を書いていたところ、当時のマネージャーがSatomiさんの独創的な言葉のセンスに興味を持ちスカウトし、デビューに至ったという経緯があります。
Satomiさんが作家としてデビューしたのは2000年11月の”to-ya”のデビューシングル「are you…?」です。
しかし、上記にも書きましたがSatomiさんが「雪の華」の歌詞を完成させたのは2000年の8月頃と、to-yaさんの「are you…?」よりも「雪の華」の方が早いのです。
つまり、Satomiさんは作家としてデビューする前に「雪の華」の作詞を完成させたということになります。
謎の天才作詞家として素性を知りたがるファンが多くいましたが、Satomiさんは2020年10月に突如TwitterとInstagramなどのSNSアカウントを削除。
その後に所属事務所であった「スマイルカンパニー」からもプロフィールが消えるなど、最後まで性別や生い立ちなどの詳細も分からないままに表舞台から姿を消しました。
「雪の華」の作詞・Satomi &作曲・松本良喜は9ヶ月前にも「月のしずく」をヒットさせていた
2003年にリリーされレコード大賞を受賞し同年の象徴的な名曲となった「雪の華」。
実は「雪の華」を制作した作詞家のSatomiさんと作曲家の松本良喜さんは、同年に「雪の華」より早くに別の楽曲も大ヒットさせています。
その曲とは、2003年1月15日に発売された映画「黄泉がえり」の劇中歌・主題歌として使用された、柴咲コウのRUI名義での2作目のシングル「月のしずく」です。

主題歌となった映画「黄泉がえり」は3週間限定公開の予定で、主題歌「月のしずく」は本作と共に大きな宣伝がされませんでしたが、口コミから反響が広がり、通常公開となった作品。
メディアで披露されることが少なかった都合からオリコン初登場では14位も、映画と共に注目を集める形で歌っている姿を観に劇場に足を運ぶ観客も出るなど社会現象化。

すぐに映画・主題歌が相乗効果でヒットする形となり、公開後の翌週に5位、3・4週目は2位、発売5週目に1位とジワジワと売り上げを伸ばしました。
Satomi &松本コンビで「雪の華」がヒットする前触れに、このようなストーリーがあったとは意外ですね。
中島美嘉は「雪の華」を撮り終えた後に納得できずにスタジオに戻り一夜漬けで手直し
「雪の華」といえば、音程やトーンの強弱が難しい名曲として知られ、それは中島美嘉さん本人も悩ませていたようです。

中島美嘉さんは「雪の華」のレコーディングの最終日を終えて帰宅した後、納得できずモヤモヤしたそう。
どうしても気になる箇所があるとして、ディレクターに「歌い直してもいいですか?」と電話し、夜中にスタジオに戻って歌い直しを決行。
中島美嘉さんは歌い出しの「のびた人陰(かげ)を 舗道に並べ 夕闇のなかをキミと歩いてる」の低音の部分に違和感があったとして、この部分を中心に徹底的に歌い直し。
「みんなに感動してもらうには、自分が納得できていない声、歌い方ではダメ。出し切った、と思えていない曲で感動するはずがない」
と、深夜から再録を始め、ぶっ続けてレコーディング、ようやく納得できる歌撮りができたそうです。
「雪の華」のミュージックビデオは冷蔵庫のようなスタジオで撮影され凍死の擬似体験
レコーディングを終えた「雪の華」は、中島美嘉さんも関係者も手応え十分でリリースまで期待が高まっていました。
「雪の華」のミュージックビデオは中島美嘉さんのリクエストによって、0度以下のスタジオで撮影されました。

普段はアイスクリームや冷凍食品のCMに使うスタジオを使用し、スタッフらはみんなダウンジャケットやセーターを着込んで撮影に臨みました。
中島美嘉さんはノースリーブで寒さに耐えながらの撮影で、「みんなあったかそうでズルイよ」と嘆いていたそう。

撮影中は熱いココアやスープを飲みながら、4時間ほど冷凍スタジオでの撮影に耐えました。
中島美嘉さんは撮影の最後には「なんだかあったかくて眠くなってきた」と、凍死の前兆が出て「やばい」と焦ったそう。

ちなみにミュージックビデオに登場する雪はスノーマシーンで作られていましたが、その正体は洗剤で、人体に影響はないものの、中島美嘉さんは口に入らないように口を閉じるなど配慮して凌ぎました。
中島美嘉は「雪の華」にタイアップを付けたくなかった
中島美嘉さんは2001年にデビューして以来、ずっとセールスは順調でした。
しかし、当時の中島美嘉さんはマネジメントに恵まれ、どの曲もタイアップを付けてのヒットでした。
中島美嘉さんはずっとタイアップを付けずに、歌だけで勝負したいと思っていた頃に、この「雪の華」に出会いました。
ようやくタイアップなしに自分の歌が認められると思われた矢先、無情にも明治製菓のチョコレートのCM曲に決まってしまいます。

中島美嘉さん曰く、
「(提供できる)曲が足りず、どうしてもはめる曲がなかった。CMの曲にしたくはなかったけど、どうしようもなかった」
とのことでした。
今ではコマーシャルのイメージを覆して世界的に知られる名曲になったということで、当時の中島美嘉さんの「歌だけで知られる」の野望は叶えられています。
「雪の華」は2003年のレコード大賞で金賞。作詞も作曲も「これ以上良い曲は書けない」
2003年の第45回日本レコード大賞で「雪の華」は金賞と作詩賞を受賞。
Satomiさんは作詞家デビューから3年で受賞となり、アーティスト以外の作詞家の中で、作詩賞受賞者の中で最短記録となりました。
2011年の第53回日本レコード大賞までに作詩賞(元 西条八十賞)を受賞したのは39人で、その中で英語表記の作家が受賞したのはSatomiさんが初めてで、時代の変化を象徴する受賞劇でもありました。
中島美嘉さんは同曲収録のアルバム「LOVE」が160万枚超の大ヒットを記録。
2003年当時は浜崎あゆみや宇多田ヒカル、倉木麻衣、MISIA、aikoなどの大御所から、愛内里菜や鬼束ちひろなど旬な歌姫が多く、”歌姫”は飽和状態でありました。

そんな時代背景の中、中島美嘉さんは「雪の華」をきっかけに異色の存在感を示し、国民的歌姫のラインナップに食い込むことができました。
Satomi&松本良喜氏のコンビは、
「これ以上、いい曲は書けない」
と言い切るほど、「雪の華」の名曲ぶりは強烈でありました。
中島美嘉は自分だけの曲の認識ではない。”好きな雪の華があるべき”
今では世界中のアーティストにカバーされている同曲ですが、現在でも”「雪の華」といえば中島美嘉”というイメージは変わりません。
韓国では人気ドラマの主題歌にもなりZEROやジェジュンなどもカバーしていましたが、中島美嘉さん本人が韓国メディアで歌唱すると「本物だ!」と大騒ぎされ、涙を流す韓国人もいたほどです。

中島美嘉さん本人は「雪の華」について「一番怖い曲」とし、
「みんな知っている。期待してもらえている分、あまり好きなように歌えないかも。通常のライブでは、もう崩せないですね」
と話しています。
色んなアーティストにカバーされることについては肯定的で、もはや自分だけの曲ではないと見ているようです。
「私は最初にガイドとして歌わせてもらっただけ。楽しんで歌ってもらえたらうれしい」
として、自分はあくまで最初に歌わせてもらったサンプルという認識のようです。
また、
「声にも好みがあるので、好きな歌手の方のバージョンで聴いてもらえればいいかなって」
「私の歌がいちばんとは限らないじゃないですか。他の方が歌った「雪の華」が響いたとしたら、それはそれで嬉しいことなので」
とも語っており、自分が一番とは限らず、聞く人にとってカバーした人の声が響けばそれも嬉しいことだとも話しています。

コメント